最近は日本建築についての本を集中的に読んでいます。
日常的に日本建築に接していると、夏の暑さや冬の寒さに閉口することもありますが、それ以上に透明感や気持ちよさに感心することが多く、こういった空間がどのようにつくられてきたのかを学ぶ必要があるな、と思い色々と読んでみているところです。
これは空間に焦点を当てて日本建築の歴史の流れを分析した本です。
時代ごとの建築空間の特徴が、さまざまな資料を用いて実証されています。
また、建築空間だけでなく、同時代の宗教観や文学・美術などにも似たような特徴が見られ、建築がそれぞれの時代性を反映してつくられてきたものであることがわかります。
大まかには、
原始時代には空間という概念がなく、ひたすら実体を追求する。御柱信仰など
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外部空間の中に建築物を彫刻的に配置するようになる。法隆寺など
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実体的なものへの執着が弱まり、絵画的な構成が発展するようになる。平等院鳳凰堂など
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内部空間に対する意識が発展し、建物外形よりも内部空間を優先するようになる。三条白河坊(住居部分)など
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人間の運動や、運動に要する時間を予想した空間構成(=行動的空間。日本独自のシステム)が完成する。江戸城本丸など
という流れが整理されています。
この本で最後に行き着いた「行動的空間」は一人のひとが持つ時間軸や一つの方向性を持つ動きに沿った空間の捉え方のように思われます。
現代はこれまでの時代に比べて、個人が持つ時間軸や行動原理が多様です。
日本建築に限った話ではありませんが、同時に人々が存在していて、それぞれの時間を、それぞれの方向性を持って、それぞれの方法で過ごす、その状況を受け入れられるような建築空間が現代的なのかな、と思いました。
著者:井上充男
出版:鹿島出版会、1969