友人が在住しているけどもうすぐ東京に帰ってしまうということで、近いようでずっと行けていなかった直島へ初めて行ってきました。
生まれてすぐにコロナ禍となりずっと旅行に連れて行けなかった息子も連れて、初めての家族旅行となりました。
瀬戸内の穏やかな気候の中に、静かな波が寄せる美しくのびやかな海岸、背面の山並み、海岸と山並みの間の高密度な集落といった環境があり、歩いて一周できるくらいの島のスケールが心地よかったです。
息子も水平に広がる海辺や起伏に富んだ山並みの散策をとても楽しんでいました。
2日間で島をぐるりと見て回って、どこもおもしろかったのですが、その中でも特に感銘を受けたのは二つの建築物でした。
地中美術館
丘の上に建物ボリュームをすべて埋設した、建物の外観が無い美術館。
建物の外観がないため、連続する空間を歩き回ることによってのみ建築を理解していくことになる、その経験がとても新鮮でした。
ところどころ設けられた中庭やトップライトから自然光が取り込まれていて、光によってさまざまな性格の空間、人やアートの居場所がつくられていました。
特にモネの部屋の、角がなくぼんやりとした自然光に満たされた白い空間は、とても幻想的でした。
光によってつくられる空間体験に振り切った、とても潔い建築だったと思います。
(内部は写真撮影不可のため、上はエントランスの中庭の写真です)
ANDO MUSEUM
築100年程度の古民家の中に新たにコンクリートボックスを挿入した、設計者自身の美術館。
元の古民家がこぢんまりとしたスケールだけど、その中に斜め壁、曲面天井、床のレベル差を持つコンクリートボックスを挿入するという最小限の操作で、空間を分節しながら新たにつなぎ直して、外観からは想像できない拡がりのある内部空間がつくられていました。
街並みに馴染む落ち着いた外観と、コンクリートと既存建物が衝突する激しい内部空間の対比がとてもおもしろかったです。
どちらの建築も以前から本やメディアで知ってはいたのですが、それだけでは全く理解できていなかったことがわかりました。
今回実際に建築を訪れて空間を経験してようやく、これらの建築が目指したことが感じ取れたように思います。
建築に対する信頼がすごいというか、建築が持つ力を信じているからこそできた空間という感じがして、すごく勇気をもらいました。