中学高校時代の友人の結婚式で静岡に行ってきました。
友人の人柄そのままに、明るく賑やかなお祭りのような式でした。
静岡へ行くのは初めてで見たい建築物がたくさんあったので、この機会にいろいろ見てきました。
友人の結婚式は滞在2日目、建築物は滞在1日目と3日目に見て回りました。
旧日向家熱海別邸/熱海市春日町
断崖絶壁の敷地に建てられた近代住宅の土留めを兼ねた地下室躯体の中に、後から計画・改修されたインテリア。上屋も含めて国の重要文化財に指定されている。
地上では広々した庭園だと思って散策していたその下に豊かな内部空間があり、とても驚きました。
地下室は、社交室:明朗:黄 – 洋間:平穏:赤 – 和室:厳粛:緑 – ベランダ:厳格:白黒 という部屋の用途と性格に合わせて空間の色が設定されており、色によってさまざまな空間の個性を生み出していました。(それだけでなく、空間ごとの素材の選定や張付方向による見せ方の違いなど、ものすごく繊細なデザインがなされていて、その総体として空間ごとの個性が生まれている)
すでに完成している地下躯体の中のインテリアという限られた設計条件だったからこそ生み出された密度の高いデザインなのかもしれません。
1936年竣工と古い建物ですが、現代では敬遠されがちな「色」を主題とした空間のつくり方は新鮮に感じました。
※内部写真は掲載不可のため庭園の写真です
駿府教会/静岡市葵区相生町
まちなかの線路脇に建つ教会。
シンプルなキューブ状のボリュームで、光はすべてトップライトから取り込む。
屋根・外壁を二重の層でつくり、室内側の層は上にいくにつれて板幅を細く、板同士の隙間を大きくすることで、まるでやわらかい布を透過してきたような優しい光が頭上から降り注ぎます。
これはかなり劇的な空間体験で、ここでしか味わえないものだと思います。
静岡市歴史博物館/静岡市葵区追手町
駿府城公園横に立つ歴史博物館。
雁行する駿府城石垣との連続性を生み出すように、誰でも通り抜けできる雁行する平屋の回廊が、展示室のボリュームを取り囲んでいます。
この回廊が開放的で明るくカラッとしたインテリアで、公園やまちの延長として市民に開かれた美術館が実現されていたと思います。
芹沢銈介美術館/静岡市駿河区登呂
登呂遺跡公園内に立つ美術館。
外部がすべて石で仕上げられており、低いボリュームで抑えてあるので、外から見ると石垣が公園の木々の間に埋もれているように見えます。
内部に入ると、室ごとに床のレベル差や天井高さ、平面的な大きさを操作してバリエーション豊かな空間体験ができるようになっていました。特に玄関前の天井の低さには驚きました。
この建物の設計者の方は独特の意匠デザインが特徴だと思っていたのですが、初めて空間体験して、空間のスケール操作がとても上手なんだな、と感じました。他の建物も体験してみたいところです。
この美術館は展示がとてもおもしろくて見入ってしまいました。
竪穴住居
登呂遺跡公園内に再現された竪穴住居。
土塁で囲まれた窪みの中央にシンプルな掘立て柱・梁のフレームがつくってあります。
このフレームに対して、外周部の土塁から垂木をもたせかけてナナメ外壁をつくり、フレーム上にはシンプルな切妻の屋根がかけてあります。
屋根の妻面は隙間が空いていて、ここから光が入り、内部の炉の煙抜きになっていたようです。
ナナメ壁で包み込まれるような内部空間は安心感があり、通気性や採光性があり快適、シンプルながらとても良くできた形式だと思いました。
草薙体育館/静岡市駿河区聖一色
運動公園内に建つ体育館。
登呂遺跡の竪穴住居を思わせる形状で、外周部アプローチまわりも土塁のように持ち上げられて、ボリューム感が抑えられています。
ナナメ外壁の垂木(めちゃくちゃでかい建物なので、スケール的には巨大な柱)の頭をスチールのリングで繋いで固めることで、竪穴住居のように室内に柱を落とすことなく、体育館の大空間を成立させていました。
平面はシンプルな回廊状で行き止まりのない構成になっており、多くの人が同時に利用してもうまくさばくことができそうです。
大きな建築物に求められるシンボル性と、それを成立させる骨格のシステム、求められる機能を無理なく納める平面計画と、見事にバランスさせた建築だと思います。
体育館の横に土塁で囲まれただけの少年野球場のようなスペースがあって、自然に斜面に座ってスポーツを眺めてしまうようなつくりと、スポーツする人が集中できる適度な囲まれ感があり、シンプルな場所のつくりかただけどとても良いなぁと思いました。
これで一日目終了。
この日は電車・徒歩・レンタサイクルで移動しました。
静岡はレンタサイクルがきちんと整備されていて、そこそこの移動距離なら自転車で行ったり来たりできるので小回りが効いてとても快適でした。