大学時代の友人の結婚パーティーで東京に行ってきました。
とても落ち着いた友人と明るい奥さんで良いバランスでした。
久しぶりの東京だったので、気になっていた場所をいくつか見て回りました。
特に印象に残ったのは3つの建築。
メゾンエルメス/中央区銀座
銀座に3面接道して建つブランドのビル。
ガラスブロックに包まれる行燈のような建ち方によってまちへの貢献+アピールを自然に成し遂げている、素晴らしい建築でした。
ちょうど内藤礼さんの展示を行なっていたので、8・9階のメゾンエルメスフォーラムに入って、ガラスブロックによる静けさと光で満たされた空間を体験することができました。
ガラスブロックであれだけ巨大な面をつくることは相当高度な技術によって成立しているはずだけど、それがことさら強調されることなく、すべてあの落ち着いたたたずまいに集約されていることが本当に素晴らしいと思います。
国立近代美術館リニューアル/千代田区北の丸公園
以前雑誌で見かけて気になっていたプロジェクト。
開館して40年以上経つ美術館のリニューアル。
このプロジェクトでは、什器の素材を揃えること、既存の床表面を削って反射を抑えること、サインを見やすく整理すること等、一般的な建築設計としては優先順位が低くなってしまいそうなところを丁寧に整理し直すことによって、同じ建築物でもその鑑賞体験を大きく変化させているようです。
元が素晴らしい建築であるところに、設計者としてどのように介入していくか、その態度がとても勉強になりました。
Bunkamuraル・シネマ/渋谷区渋谷
こちらも以前雑誌で見かけて気になっていたプロジェクト。
ミニシアターのロビーのリニューアル。
期間限定のスペースとなるため、内装を解体せずに印象を刷新することが前提課題だったようです。
そんな課題に対する回答として、床と什器だけで空間をリニューアルしています。
デザインの手つきが最高で、影色のロールカーペットを床に敷き詰めて、その上に乗る什器は簡易な工法でつくり(でも形状はすごく検討を重ねたと思われる)、同じロールカーペットで仕上げて壁に立てかけたり床に置いてある、ほぼそれだけ。
これだけ限定的な方法で鮮やかに生まれ変わった空間を見ると、デザインすることの意義を感じられるし、一つ一つのディテールを見るとデザインすることの楽しさが伝わってきて、素晴らしかったです。
島根と違い常に変化にさらされる東京という都市にあって、まわりが変化しても時代のうねりに流されず残り続ける建築、変化することを前提にして軽やかにつくられた建築、さまざまな射程距離でつくられているけど、それぞれ固有の条件にうまく応えてつくられた場所はどこも魅力的です。
ということは逆に、あらゆるプロジェクトに潜在しているであろう固有の条件をうまく発見することができれば、そのこと自体が一つのデザインになりうるのかなと思ってみたり、設計することの可能性の拡がりを感じて、とても有意義な旅になりました。