日本的なデザインとは何か、どのように形成されてきたのかを分析した本。
線、空間、時間などさまざまな内容について、日本のデザインが分析されています。
たとえば、
日本人にとって、曲線は直線が変形したうちの一つの形でしかない、つまり本質的には直線=曲線と捉えられてきた。
それは、日本人が線を描く道具として「撓み尺」という、力の加え具合で自由に直線にも曲線にも変形できるものを用いていたため。
一方、西洋では定規とコンパスで直線と曲線を書き分けるから、直線と曲線は本質的に別ものと捉えられてきた、と書かれています。
こういった、目から鱗のさまざまな分析がなされています。
全体を読んで、日本的なデザインに共通した特徴は、その背景に「ゆらぎ」があるということかもしれないと思いました。
ひとつの形を持ちながらも、それが絶対的なものではない。
「ゆらぎ」があることで常に変化の可能性に開かれているあり方は、軽やかで自由です。
建築を計画していると、自分で設定した形式とかルールにがんじがらめになって、堅苦しく窮屈な発想に陥ることがあるので、そんな時に思い出したくなる内容でした。
著者:伊藤ていじ
出版:鹿島出版会、1966