住宅プロジェクトのお施主さんの実家と親戚の材木屋さんがある大分県に行ってきました。
地元の木材を部分的に活用したいというお施主さんの想いを実現するための第一歩が動き出したところです。
設計者と家具職人(木工房高橋)さんで材木を選定してきました。
この材木がどのように挽かれて建築に活かされるか、とても楽しみです。
せっかく大分県まで来たのだからということで、コロナ禍以降控えていた建築見学もしてきました。
まずは小鹿田焼の集落。
立体的な地形に沿わせて建てること、また非常に山深いエリアのため、人力で運べるサイズの材料でつくられたであろう建物たちは、一般的な建物よりもひと周り小さいボリュームが連なっていてとてもかわいらしかったです。(ある程度広い場所に建てられた新しい建物はそうでもなかったのですが)
勢いのある川の水で水車を動かし土を細かく砕いて陶器をつくるという、地形・建築・プログラムが分断なくつながったとても魅力的な集落でした。
次はナック建築事務所時代に設計プロポーザルにも参加した、大分市の大分県立美術館。
大分市中心部に建てられた県立美術館で、都市空間そのもののような巨大なスケール感のホールと、その上に浮かぶ展示室の箱という非常に明快な構成で、この敷地に対してとても説得力のある計画がなされているように感じました。平日の日中のためほとんど人はおらず…もう少し、このようなスケールの空間を人々が行き交っている様子を見てみたかったです。写真右手のガラスシャッターが全開するという提案だったと思うのですが、開いた様子も見てみたい。
次は、豊後高田市の山中にある富貴寺。
石段を登り切った平地に、木々に囲まれて美しいプロポーションを持った寺院があらわれます。
その圧倒的なプロポーションの美しさによって、建築そのものが神聖さをまとっているように感じられます。
でも、それだけでなく、建物の美しさを引き立てるように周辺の木々と建物に一定の距離が確保されていたり、平地を砂利敷にして建物と周辺の縁を切っていたり、平地に至るまでに苔むした石段で木々の間を通り抜けてきたりと、周辺環境含めてデザインされているところがおもしろいです。
続いて北九州市まで戻り、北九州市立中央図書館。
有名なヴォールト天井のインテリア空間だけを見ていてもわからない、周辺状況との接続方法をかなり強く意識された建築でした。立体的に周辺の都市軸を引き込み通り抜けていく配置計画。けれど、その軸が感じられないくらいに建物は閉鎖的でインテリア感が強いという不思議さ。
ヴォールトのメインボリュームと、ふたつのヴォールトの間をつなぐサブボリュームによってさまざまなスペースや動線が生まれて、豊かな内部空間がつくられていました。
最後は同じ北九州市の西日本総合展示場(本館)。
小倉駅の近く、港湾エリアという周辺環境の中でどのような建築があるべきか、さまざまなイベントに対応できる無柱の大空間が必要、といった問題を、見方によっては工場のクレーンのような、船の帆柱のような巨大な鉄骨柱から屋根をケーブルで吊り下げることで一気に解決しています。
上の写真のような無限に続いていきそうなシステマチックな構成も、さまざまなイベントに合わせた可変性を持つ空間としてとても理にかなっているように思います。
ものすごく鮮やかで鋭くて、約半世紀前に建てられた建築とは思えないくらいに現代的に感じられました。
久々の遠征でしたが、とても収穫の多い充実した時間となりました。
まだまだ咀嚼しきれないので、もう少しゆっくり考えてみようと思います。