金屋子神話民俗館



広瀬町の金屋子神話民俗館に行ってきました。
島根に住んでいながらこれまでこの建物の存在を知らず、11/30で閉館するという話を聞いて、急いで行ってきました。

製鉄の神様を祀る金屋子神社と向き合うような位置で、紅葉した木々の奥にひっそりと建物が佇んでいます。
この控え目な佇まいがとても良いです。




建物の構成は、両側に立つ分厚いコンクリートの壁と、軽快な鉄骨のヴォールト屋根。
奥のホールを除いて、この建物はほとんどこれだけでできています。
屋根をかけて雨風を凌げる「気積」さえ確保すればOKなのだ、と言わんばかりのあっけらかんとしたつくりは、遺跡にも似た開放感があります(もちろん展示空間はきちんと閉じられています。「つくり」が開放的という意味です)。
そのような設計者の意志を感じられる、とても気持ちの良い建築でした。

他にも、小川に架かるブリッジで紅葉した木々の間を通り抜けるアプローチとか、暗い展示室を抜けた後に到達する白いホールとか、連続的な体験がうまく計画されていたように思います。

しかし、何でまだまだ問題なく使えそうなこの建物が閉館なんだろう?と管理人さんに聞いてみると、敷地が土砂災害警戒区域に指定されてしまい、公共的な建物として継続していくことができなくなってしまったそうです。
そんなもったいない!と思う一方、不特定多数の人が利用する建物であれば、災害時のリスクに配慮して閉館するのもやむを得ないか…と思ったり。
このような事例を目の当たりにすると、建物の敷地選定が非常に重要であることを意識させられます。
そこが本来どのような場所であったのか、今後どのような場所になっていくのか。
(設計者が敷地選定に関わる機会は多くないので、実際にはかなり難しいところですが、)建物を建てる範囲の地面のことだけでなく、もっと広く地勢的な視野を持って、長いタイムスパンへの想像力を働かせるような意識が必要なのだろう、と思います。